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障子に針

実家にてコンピュータの前で座布団に座りずっと譜面を書いていると腰が疲れる。時々台所に行きお袋がなんだかんだしている側で世間話をして邪魔していると、台所の古いガラス戸の下に高さを上げるために木片を継ぎ足しているのに目が行った。昔から気づいてはいたのだが詳しく聞いてみたことは無かった。

「なんでここに足したん、誰がしたん。」と尋ねると

「昔、ここは障子やったけどアンタらが破るから別の所のガラス障子を持ってきてん。」とのこと。

なんでも、僕が幼児の頃に度々指で向こうから突き破ったらしい。いくら言っても聞かないので、しまいにヒイばあちゃんが針を持って、突き破った指をこちら側から突いて痛い目にあわせようとしたらしい。

お袋は酷い事をするなと思ったらしいのだが、僕はそれを逆に面白がって突き刺されるよりも素早く指を引っ込める。これがまた面白がって余計にエスカレートするもんだからたまりかねて件のガラスに入れ替えたらしい。
その話を聞いて大笑いした。確かにやりそうな事だ、今の僕もそんな傾向がちゃんと残ってる。ダメだと言われてもますますエスカレートする。いい歳して馬鹿である。やれやれ三つ子の魂なんとやらか(笑)。

それで、この高さの合わない障子に下駄を履かせたのは近所の中前の棟梁。見事な細工で、ガラス障子の下に足した下駄なんかは数年すればはずれて何度も修理をしなければならないようなものなのに、一度も壊れたことは無くまるで最初からそういう木で有ったかのようにビクともしていない。
実際この人は名人でうちの家はこの人が手を入れた精密な細工であふれかえっている。
親父は子供の頃にこの人の弟子だったようで、銀行員の癖にやたらと木工が上手い。なんと言うのか採寸から計算、細工、道具の手入れ、精度と基本が完成している。今時の素人大工よりよほど腕が立つ。
僕も子供の頃に中前のお爺ちゃん。つまり棟梁が風呂を改築するときや何だかんだと、うちに来て大工仕事するのを見るのが好きで、周りでちょろちょろしていた。ただしもうお爺ちゃんは名人の域に達しており子供相手に自分の知識をひけらかしたり教えたりすることは無くただ黙々と仕事していた。
やさしい感じなんだけど、ほんの少し恐い感じもあるおじいちゃん。いや、厳しい感じだったんだろうな。子供を相手することは無く、かと言って叱るわけでもない。でも、僕が行き過ぎたことをするとピシャリと叱られる。
なんだか最近見かけなくなった人物だなぁ。いや、何人かはいるなぁ(笑)。
子供はそんな人物に教えられたり叱られたりしたらいい教育になるのに今時の親は逆恨みしたりしてしまうんでしょうね。やれやれ。
by xou99 | 2012-03-19 00:30 | 色々と、
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